魂の牢獄

すごく好きだった人と一緒に生活してる気になっていた。

三十年も。

子どもも授かり、子育てもした。何人も。

不器用だったけど、自然に恵まれて、楽しかった、と、思ってた。

子育ては、ほぼ終わった。

相方は、私を見てなかった。

気づいた時には、私は、どうしたらいいか、わからなくなっていた。

このまま生きていていいんだろうか。

私は、何がしたかったのだろうか。

震災で仕事も家も失った。

気がついたら家族の事情で、私が二十歳の頃住んでいた大都会のおしゃれな街の近くに住んでいる。

振り出しに戻る。すごろくなら、そうだろう。

「二度目の二十歳」っていうドラマがあった。(ネタバレ有り)

私が好きなチェ・ジウが、もう一度大学生に戻って人生をやり直す作品だった。大学教授の夫は浮気をしていて、離婚の準備もしていた。

チェ・ジウ演じるヒロインは、大学時代に妊娠しダンサーの夢を捨てて家庭での従順な妻の役割を果たしていたのに、今にも捨てられそうなのだ。

そのドラマを観ていた時は、「ひどい夫だ」と

人ごとだった。四、五年前か。

 

私は、十年前迄、自分の夢を追いかけるように田舎で自営で仕事をしていた。震災で、家や仕事を失って、何が一番辛かったかというと、家事と子育てに専念することだった。子育ては、難しい。次から次へと悩み事が出てくる。ましてや、プチ都会での専業主婦の母たちとの付き合いも、なかなか大変だった。

ある主治医に、愚痴をこぼした。「留学したいな」一番下の子が、まだ中1だった。

主治医は、「まだ早いな」。子どもが二十歳になるまで、待てと言う。私は、いくつになっているだろう、と思った。

 

思えば、今が、その時なのだ。

お金は無いな。まだ、下の子にお金はかかる。

自分の夢に向かえるとも思えない。

だが、四年前、留学するチャンスはあったのだ。

下の子が、ニュージーランドショートステイした。帰って来て、NZに戻るか、日本で進学するかという選択時に、私の同伴を希望された。

初めてのチャンスだ。私にとって。

海外免許を取って、子どもの送り迎えをして、何らかの仕事をするのだろうか。

勇気が無かった。

だから、今、日本にいる。

 

私が、私を解放してないのだ。

そんな私は、魂の建て直しをしなければならない。私が私を縛っている。